研究と成果

歴史と伝承に秘められた真価が最先端科学で明らかに

ケベック・メープルシロップ生産者協会は、メープルシロップの健康効果に関して、カナダやアメリカ、そして日本の研究機関と国際的なネットワークを構築し、さまざまな分野の第一人者とともに研究を進めています。

原生林に自生するサトウカエデ(メープル)の樹液を煮つめただけの天然食品、メープルシロップ。その長い歴史と伝承に秘められた真価が、最先端の科学によって、明らかになりつつあります。 

 


 

植物ホルモンの一つ、アブシシン酸が発見されました。
血糖値がしょ糖のように急上昇しないことが明らかになりました。


 

 
 カナダのラバル大学のデジャルダン博士は、メープルシロップにはアブシシン酸ファミリーの植物ホルモンが相当量含まれていることを明らかにしました。これらの植物ホルモンは、インスリン抵抗性の発症を抑える作用を持つ可能性があります。アブシシン酸や、その代謝物であるファゼイン酸には、筋肉への糖の取り込みを活発にし、膵臓からのインスリン放出を促し、脂肪細胞へのインスリン感度を高める可能性があるため、メタボリックシンドロームや糖尿病に対して有効な武器となり得るのではないかと期待されています。

また、同大学のマレッテ博士は、動物実験でメープルシロップの血糖値に影響すると考えられる作用について、しょ糖と比較した場合の結果を明らかにしました。ラットにメープルシロップを加えた餌を与えても、しょ糖を与えた時のような血糖値の急上昇が見られませんでした。

 

 

   

抗酸化物質、ポリフェノールが67種類特定されました。


 
 アメリカのロードアイランド大学のシーラム博士は、メープルシロップには67種類のポリフェノールが含まれ、そのうち9種類がメープルシロップ特有の成分であることを明らかにしました。科学文献によると、メープルシロップとメープル樹液で存在が確認されたポリフェノールの幾つかには、激しい運動後の炎症や筋肉の損傷を軽減し、回復を早める可能性があります。また、その抗酸化作用によって、急激な運動によるダメージを改善します。

ポリフェノールは、活性酸素を抑える働きをもつ抗酸化作用をもっています。活性酸素は、物質を酸化させる力が強い酸素のことで、肌のしみやしわといった老化現象から、動脈硬化やがんなどの生活習慣病の原因ともされています。その活性酸素をおさえる抗酸化作用をもつポリフェノールに、抗高齢化や抗生活習慣病など健康に有益な効果をもたらす可能性があることが明らかにされています。
 
 

遺伝子の動きを比較分析する「ニュートリゲノミクス」*1による
メープルシロップの有効成分ポリフェノールの抗酸化と抗炎症作用、そして免疫機能に関する主に動物実験による研究


 
 
 
 日本では、2009年より、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所の食品機能性評価グループリーダーで東京大学大学院農学生命科学研究科名誉教授の阿部啓子博士が率いる研究チームが、カナダ・ケベック州産メープルシロップの研究を行っています。

1. 2011年、動物実験により、肝臓を保護する可能性があることが明らかになりました

2. 2014年、動物実験により、脂肪分の多い食事の摂取で起こる肝臓の炎症を緩和する可能性が明らかになりました

3. 2016年、動物実験により、高脂肪食で起きる肝臓の代謝の悪化を緩和する可能性があること、さらに、肝臓の酸化を抑制する可能性があることも分かりました

4. 2017年、ヒト介入予備実験が行われ、メープルシロップの摂取により人の血液中の遺伝子の発現に変化があることと、その一部に免疫に関係するものが含まれていることが明らかになりました

5. 2018年、これまでの動物実験データ解析から、全身の炎症を抑制し2型糖尿病動脈硬化のような合併症発症の抑制に寄与する可能性が明らかになりました

今後、さらに抗酸化抗炎症作用、そして免疫機能に関する研究を進め、メープルシロップが「常に健康でいようとする働き=生体の恒常性維持機能」を高め、未病の改善に貢献する可能性を評価する研究が検討されています。
 
「未病の改善」
「未病」は病気ではありません。病気に向かっている状態をいいます。たとえば将来、高血圧、脂肪肝、糖尿病などの生活習慣病になる予兆のある状態です。その未病を改善するためには、人に備わる常に健康でいようとする働き(生体の恒常性維持機能:ホメオスタシス)を高めることが大切です。この働きを高めることに、私たちが日々食べているものが深く関わっています。
 

*1「ニュートリゲノミスクス」(遺伝子の動きを比較・解析する研究方法)
食品の安全性と機能性を、遺伝子の転写量を分析することにより解析する学問。特定の食品を摂取した際に、体の各組織がどのように反応するかを解析し、食品生体作用のメカニズムを解析する研究方法です。食品科学を飛躍的に発展させるものとして注目されています。
 

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Maple and Science
(フランス語・英語)
メープルシロップの研究成果

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