最新の研究成果

メープルシロップの有効成分ポリフェノール(2017年2月)

 ケベック・メープル製品生産者協会(カナダ、ケベック州)は、メープルシロップの有効成分の健康効果に注目し、日本において、機能性食品研究の第一人者、東京大学大学院農学生命科学研究科の名誉教授で、公益財団法人 神奈川科学技術アカデミーの未病改善食品評価法開発プロジェクトリーダーである阿部啓子博士に依頼し、ニュートリゲノミクス(遺伝子の動きを比較し解析する研究方法)(注1)による、メープルシロップの健康効果を食品機能性として評価する研究を行っています。
 この度、2017年2月発行のonline 版“Molecular Nutrition & Food Research ”に、メープルシロップに関する最新論文が掲載されました。この論文は、2015年に発表された「メープルシロップが肝臓の炎症を和らげる」実験を再確認し、さらに新たな機能を明らかにするために実施され、まとめられたものです。
 この論文における実験では、メープルシロップから有効成分(ポリフェノール)を抽出したMSX(Maple Syrup Extract)が用いられました。マウスを「通常食」、「高脂肪食」、「高脂肪食+MSX」を摂取する3つのグループに分け、それぞれのグループのマウスの肝臓にあるすべての遺伝子の動きを比較・分析。MSX添加量の少ない(0.02%)場合と多い(0.05%)場合でも比較を行いました。
 その結果、脂肪分の多い食事を摂り続けて代謝が悪くなった肝臓が、少ないMSX添加量(0.02%)において、その代謝の悪化を和らげる可能性があることが分かりました。また、多いMSX添加量(0.05%)において、その代謝の悪化を和らげる作用が一定であるとは限らないことがわかりました。このことから、脂肪分の多い食事で起きる肝臓の代謝の悪化に関して、メープルシロップは少ない添加量でも十分に効果を発揮することが分かりました。
 さらに、抗酸化作用をもつタンパク質「グルタチオン」を作り出す働きを助ける作用が、少ないMSX添加量でも起きることが分かりました。このことから、メープルシロップには、体の酸化を抑制する抗酸化作用があることも分かりました。現在、これらに対する効果を検証するさらなる研究が期待されています。

これらの研究対象に肝臓が選ばれた理由

 肝臓の主な働きは代謝と解毒です。代謝は新陳代謝の略で、外界から取り入れた栄養素を素材として合成・化学反応をおこし、体に必要なものに変えていく働きです。食べ物の栄養素は腸で吸収されます。肝臓はその栄養素を加工し、全身の組織に必要な形に変えて送り出す臓器です。例えば、糖であれば脳などへ、アミノ酸であれば筋肉などへ、そして脂肪であれば脂肪組織などへ送り出します。そしてそれらの栄養素は、それぞれの組織で利用され、体を正常に維持する働きをします。そのため、糖、脂肪、タンパク質、アルコールなどの代謝に関わっている肝機能の低下は、生活習慣病やメタボリック症候群の発症・進行に密接に関わっていきます。
 今回の研究は、このように臓器の中で最も重要な役割を担っている肝臓の代謝機能に注目。ニュートリゲノミクスを用いることにより、メープルシロップの有効成分ポリフェノールと肝臓の代謝機能における関係を評価しました。

ポリフェノール:抗酸化作用とアンチエイジング効果

 最近の米国ロードアイランド大学の研究により、カナダ産のメープルシロップには、64種類以上のポリフェノールが含まれていることが分かっています。ポリフェノールとは、植物の皮や種などに微量に含まれる色素成分や苦味、渋み成分で、植物が厳しい自然環境から身を守るために生み出した免疫力・健康維持のための機能性物質です。その効能として、人をさまざまな病気から守る強い抗酸化作用や、アンチエイジング作用があげられます。

これまでの研究

 2011年、研究の第一弾として、メープルシロップがラットの肝機能マーカー(注2)を低下させる可能性があることが発表されました。この研究では、使われたラットの肝機能障害の程度を表す血中マーカーASTとLDHの濃度が減少しました。そこで、肝臓内のすべての遺伝子の動きを比較・解析した結果、肝臓の正常な活動に有害な遺伝子の動きが低下したことが分かりました。つまり、メープルシロップは肝臓を守る働きをしている可能性があるのです。
 2014年、同研究の第二弾、2型糖尿病(注3)のマウスを使った研究では、メープルシロップに「肥満を抑制する効果がある可能性」が示されました。また同時に、「脂肪分の多い食事の摂取により引き起こされる肝臓の炎症を和らげる可能性」が見出されました。この研究論文は、2015年のBioscience, Biotechnology and Biochemistryで発表されました。

用語の説明

注1:ニュートリゲノミクス(遺伝子の動きを比較・解析する研究方法)
食品の安全性と機能性を、遺伝子の転写量を分析することにより解析する学問です。特定の食品を摂取した際に、動物の体の各組織がどの様に反応するかを解析し、食品生体作用のメカニズムを解明する研究方法です。食品科学を飛躍的に発展させるものとして注目されています。

注2:マーカー
ある病気の存在、進行度や人の体の状態を客観的に測定し評価するための指標で、医療における診断や治療に用いられるものです。

注3: 1型、2型糖尿病
1型糖尿病:膵臓のβ細胞が壊れて、まったくインスリンが分泌されない状態になります。インスリンを体外から補給しないと生命を維持することができず、生きるためにインスリン注射が欠かせなくなります。
2型糖尿病:遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満・運動不足・ストレスなどをきっかけに発病します。

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