最新の研究成果

糖尿病やメタボリック症候群の予防に期待が広がる メープルシロップの肥満抑制につながる効果が示唆されました。(2014年4月)

ニュートリゲノミクス(遺伝子発現解析)による研究で、メープルシロップの健康機能性として世界で初めて肝臓を保護する効果を確認した東京大学名誉教授 阿部啓子博士が率いる東京大学大学院と神奈川科学技術アカデミーの研究チームにより、2型糖尿病モデルのマウスを使った更なる研究の結果、メープルシロップに肥満を抑制する効果がある可能性が示唆されました。

肝臓は、脂肪や糖質、アルコールの代謝に重要な役割を果たす臓器で、肝臓の機能低下が糖尿病やメタボリック症候群などの生活習慣病に密接に関わることがわかっています。この肝臓の機能を保護する効果が分かったことから、健康機能性を評価する研究の第2弾として、生活習慣病にフォーカスした研究を開始。メープルシロップに含まれるポリフェノールを抽出した抽出液「MSx」と2型糖尿病を患ったマウスを使って、ニュートリゲノミクスにより糖尿病に対する効果を検証しました。

今回の実験では、0.05%のMSxを含む餌を与えた群と含まない餌を与えた群の2つに分け、その違いを評価しました。0.05%のMSxは、人間の摂取量に換算した場合のメープルシロップ15mlと同等と考えられます。結果、餌の量にほとんど違いがないにも関わらず、MSx群では体重増加が有意に抑制されました。そこで、この体重増加の抑制を始めとするMSxの影響を調べるため、栄養素代謝の中心的な役割を担う肝臓に対し、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を実施。その結果として、2型糖尿病モデルのマウスの肝臓において、MSxの摂取がタンパク質の折りたたみを助ける「シャペロン」の発現を増進することが分かりました。

シャペロン(Chaperone)は、他のタンパク質分子の正しい折りたたみ(フォールディング)を助けるタンパク質の総称です。タンパク質はきちんと折り畳まれることによってその機能を発揮します。しかし、糖尿病やメタボリック症候群などで、慢性的に高血糖や高脂血症の状態にあると、細胞の酸化ストレスが増大します。体は過度の酸化ストレスを受ける状態が続くと、DNAの修復を助けようとして細胞の再生周期を遅らせます。すると、タンパク質の合成の場である小胞体に折りたたまれなかった不完全なタンパク質が蓄積し、エネルギーが溜め込まれます。

今回の実験では、2型糖尿病モデルのマウスにMSxを摂取させることで体重増加が有意に抑制されました。そして遺伝子発現解析により、MSx摂取がタンパク質の折りたたみを助ける働きのあるシャペロンの発現を促進し、そのことにより不完全なタンパク質の蓄積を抑制する、つまり過度なエネルギーの蓄積を抑えることで、肥満の抑制につながるという可能性が示唆されました。
 
タンパク質の折りたたみとは
タンパク質は生命を支えるあらゆる機能を受け持つ、きわめて精密な分子機械のようなものですが、そのつくりはわずか20種類のアミノ酸が1列につながったものです。その鎖はただ長々と伸びているわけではなく、きちんと折りたたまれて一定の構造をとっています。このように一定の形に折りたたまれることによって、その機能が発揮されます。


血糖値の上昇に影響する作用も明らかに
ポリフェノールは新たな種類を特定、現在63種類を含有

ケベック・メープル製品生産者協会では、日本だけでなくカナダやアメリカなどの研究機関にメープルシロップの健康効果に関する研究を依頼しています。そのうちのひとつカナダ・ラヴァル大学のDr.Maretteの研究チームの動物を使った研究によって、血糖に影響すると考えられる作用について、メープルシロップをしょ糖と比較した際の結果が明らかになりました。ラットにメープルシロップを加えた餌を与えても、しょ糖を加えた餌を与えた時のような血糖値の急上昇は見られなかったのです。

また、高脂肪食にメープルシロップを加えた餌を与えたラットと高脂肪食にしょ糖を加えた餌を与えたラットを比較したところ、メープルシロップ群では、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態で、高血糖を招く)と耐糖性(血糖値を一定に保つためのグルコース処理能力)が改善される結果が見られました。現在は更なる研究を行い、メープルシロップの血糖値上昇に影響する作用の解明を続けています。

アメリカ・ロードアイランド大学のDr.Seeramによる研究では、2011年にメープルシロップから54種類のポリフェノールが発見され、その一部には赤ワイン、ベリー、茶および亜麻仁に含まれる化合物と同じ抗酸化効果があることがわかりました。最近の研究では、抗酸化力を有し、健康効果が期待されるフェノール化合物をさらに9種類を突き止め、現在63種類のポリフェノールが含まれていることが明らかになっています。

 

ケベック・メープル製品生産者協会の研究について

東京大学の研究プロジェクトは、ケベック州農業・漁業・食品省(the Ministry of Agriculture, Fisheries and Food of Quebec / MAPAQ)とケベック・メープル製品生産者協会の援助によるものです。ケベック州農業・漁業・食品省の援助は、プログラム「セクター開発への分野別開発戦略コンポーネント1 (Support Program for Sectoral Development Strategies - Component 1)」を通じて提供されています。
ロードアイランド大学の研究プロジェクトは、カナダ農務・農産食品省(Agriculture and Agri-Food Canada)とケベック・メープル製品生産者協会の援助によるものです。カナダ農務・農産食品省の援助は、the Conseil pour le De'veloppement de l’Agriculture du Que'bec (CDAQ)のAdvancing Canadian Agriculture and Agri-Food (ACAAF) program を通じて提供されています。

ラヴァル大学の研究プロジェクトにおける第一セグメントは、カナダ農務・農産食品省(Agriculture and Agri-Food Canada)とケベック・メープル製品生産者協会の援助によるものです。カナダ農務・農産食品省の援助は、Growing Canadian Agri-Innovations プログラムを通じて提供されています。


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